【内部通報】内部通報窓口はダイヤル・サービス

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第7回 ダイヤル・サービス CSRオープンセミナー
「‘ 内部通報制度’は コンプライアンス経営のキーポイント」

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公益通報者保護法の民間向けガイドラインのポイント

講師 立教大学大学院 経済学研究科 教授  田中 宏司 氏

公益通報者保護法への対応とそのフロー

 公益通報者保護法は2006年4月1日から施行となります。
公益通報者保護法の目的は「 公益通報者の保護」と「 事業者による法令順守の促進」です。 
また、不正行為の未然防止と制度の乱用を避ける方向で作られています。
通報者は何でも公益通報できるという誤解がありますが、この法律では決められた要件があり、それを満たされないものは保護の対象とされない仕組みになっています。(意図的に誰かを陥れようとか、暴露して企業を困らせようとする不正目的では保護対象としません。) 
公益通報の定義では「 法令違反行為が生じ、またはまさに生じようとしている」事情が必要案件であり、「生じようとしている可能性がある」という事情は含まれません。
公益通報の法令違反行為には、「個人の生命または身体の保護」と「消費者の利益の擁護」が定義されています。
内閣府はもともと消費者の基本的な権利を保護することを目的としていますので、この法律では消費者保護が前提となっていました。その他に「環境の保全、公正な競争の確保、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護」にかかる法律違反が含まれます。
次に保護対象となる公益通報者の範囲に「退職者」とありますが、内閣府に問い合わせたところ、労働法上の雇用契約の存在が前提になっているので退職した時点で契約が切れてしまう退職者は対象から外れるとのことです。
公益通報者保護の内容は公益通報による@解雇の無効、A派遣契約解除の無効、B降格、減給の無効です。

複数の通報ルートの確保

 注意しなければいけないのは通報先ルートです。 
3つの通報先がありますが、それぞれ通報する場合の要件が微妙に違います。
@「社内通報」は、原則として自由に通報できるようになっています。
「不正の目的ではなく、法令違反が生じ、またはまさに生じようとしていると思った」とありますので、そうではないかと思っただけで通報ができます。 

A「行政機関への通報」の場合の要件は、まず各企業への指示権限がある監督官庁でなければいけません。 監督官庁以外へ通報すると、各省庁のガイドラインにより、総じて受領を拒否され、該当する官庁へ通報するよう指示されます。 加えて「 不正目的でなく、法例違反行為が生じ、またはまさに生じようとしていると信じたことに相当の理由がある」という要件が必要です。一言で言うとある程度の証拠がなければいけません。 

B「事業者外部(マスメディアや消費者団体等)への通報」の場合は更なる要件を満たしていなければ認められません。 まずは@とAの要件を前提として、a〜eの次の5つの要件が加わります。

a.不利益な取扱いを受けるおそれがある、
b.内部通報では証拠隠滅のおそれがある、
c.外部に通報してはいけないと正当な理由なく求められた、
d.書面での内部通報後 20日以内に調査を行う旨の通知がない、または事業者が正当な理由なく調査を行わない、
e.生命・身体に緊急な危害が及びそうな場合、です。
ここでd.は大切なポイントです。
従業員から社内通報ルートで法令違反の調査依頼があり、受領したにも関わらず放置したまま20日が経過すると、通報者は自動的に外に持ち出していいという事になります。 この要件の議論の過程では、原則としてできるだけ社内に通報して外部に出さないで欲しい経団連など企業サイドと、社会正義に反するようなことは外に言って早く是正させるべきという考えの一般消費者団体の代表とで意見の対立があったと伝えられています。

これまで内部告発は社会の中でややマイナスイメージがありましたが、今回公益通報者保護法で保護されるということでプラスイメージに変わります。 私の個人的な意見ですが、法の保護があるということから働く人の意識が変化することを考慮に入れることが必要だと思います。 
法律は省令に基き作成した別表に、違反対象となる法律413本を上げています。今後、新しい法律が成立したりこれまでの法律が改定される毎に、これを精査改定しHPで公開していくそうで。つ まり対象の法律は今後どんどん変わり得るということになります。
日本のこの法律は英国の「公益開示法」を参考にしています。
英国では内部への通知が前提で、社内に通知しないと外へ出しても保護されませんが、日本の法律上はそうではない代わりに条件が厳しいという形です。
公益通報者保護法は原則“実名”を求めています。何故かというと、通 知された内容を調査する必要があるか調べ、必要があれば調査する過程でその状況を本人に通知するからです。また本人であると特定できないとその人の保護はできないので実名は要件となっています。 また、法律では相談窓口の設置を求めていて、相談窓口と通報受付窓口は一体化して運用していいことになっています。 ここの主旨は、通報された内容が法の要件を満たしているかを調べるためには相談窓口に相談しなければいけないことが起こり得るという点なので、窓口を別に設置できなくて機能を分けて運営されていれば構わないわけです。

民間事業者向けガイドラインの内容

民間事業者向けガイドラインは、昨年秋から今年の3月にかけて内閣府に民間事業者向けガイドライン研究会が設けられて議論されてきました。
研究会のメンバーは大学教授2名、弁護士2名、大企業メンバー2名、中小企業メンバー2名、労働1名の合計9名で構成されています。 研究会には毎回国民生活局長、審議官、担当の企画課長が出席していました。 内閣府はこれまでに、7月に民間事業者向けガイドラインを公開し、パブリックコメントを求めて一般公表しました。
今後は地方において何度も説明会を開いていく計画です。
来年には民間事業者向けガイドラインの報告書を発表するという計画もあり、内閣府をあげて周知徹底しようとしている動きです。 民間事業者向けガイドラインには拘束力があるかと申しますと、結論としては、法的拘束力はありません。 しかし法律を補完する位置づけにあると同時に、周知徹底を図るという国会の付帯決議があるので、法的拘束力はなくてもガイドラインに沿った整備をしておく必要があります。 ガイドラインは通報を適切に処理するための指針で、自浄作用を高めて風評リスクを減少させる性格も持っています。

ガイドラインは以下の通りです。

1. 経営幹部を責任者とし、部署間横断的に通報を処理する仕組みを整備する。

2. 通報窓口と相談窓口を設置する。相談窓口は通報窓口と一元化することが可能である。

3. 内部規定を整備する。
 公益通報者保護法の内容と、公益通報者が保護されることを周知徹底することを法で要請されているので、規定を整備し、それを社員、管理職まで教育することが必要です。管理職の人が通報を受けた場合には、管理職自身が(これは通報であると)理解する意識とすぐに社内通報担当に連絡し対応する連携が必要です。 さらに個人情報保護法の観点から、通報の取扱いも個人情報の保護については留意した内部規定が必要です。

4. 通報受付時の必要事項は、通報受領の通知、通報内容の検討、個人情報の保護である。
 これらを記録するためのフォーマットが必要です。
フォーマット例として、労働者からの通報フォーマット、通報受付票、管理台帳をそれぞれの過程で2種類ずつ計6種類を参考としてください。

(内閣府ウェブサイト内
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/koueki/minkan/youshikirei.html)

それを見ると通報者はどんな内容を通報すべきか、受け付けた人はどん内容を記録するべきか、それをどのように管理するかが具体的に分かります。 受け付けてそれを本人に通知し、調査しその結果を通知し、その後フォローアップするまで法が求めていますので、管理台帳で管理する必要があります。 ポイントは、公益通報者保護法は法律なので、何かあったときに立証できなければいけません。 要件を満たしているか検討するためには、記録をとっていなければ出来ません。第一報の通報受付から管理が重要です。

5. 調査を実施する場合は、通報者が特定されないようその方法に十分に留意する。
 ダミーの案件を作りながら調査するなど、あくまで通報者本人の立場を守りながら会社として慎重に対応する必要があります。 通報者への連絡や報告の方法も配慮すべきです。

6. 後のフォローアップをきちんと実施する。
日本の進んだ企業では3ヶ月と6ヶ月できちんとフォローアップを実施し、是正されていることを確認しています。フォローアップの方法を間違うと通報者が分かってしまう可能性があるので、ここでも十分留意する必要があります。社内通報の担当者は本当に大変な仕事ですが、コンプライアンスをきめ細かくやることが会社の信頼を保つ源なので慎重にお願いしたいと思います。

7. その他の部分、周知徹底とありますが、ここでのポイントは一般社員と同様に管理職、特に上級管理職や経営者の方々によく理解していただくということです。

内部告発を防ぐために

 ここで、内部告発を防ぐための経営者・企業の対応について三つの条件をまとめました。
一つは、経営トップが日頃からコンプライアンス・企業倫理の実践を重要視しコミットメントすることです。CSRの骨格・基盤はコンプライアンス経営です。コ ンプライアンス経営を実践することが、広い意味で各企業が本業に基づいて自主的にCSRを推進するという前提になりますから、経営トップが意識してコミットメントする必要があります。
またそのメッセージは社内だけではなく社外にも発信して欲しいと思います。
「当社はコンプライアンスとコーポレートガバナンスをきちんとやります」「このようにCSR推進に力を注いでいます」と具体的な方針を掲げて頂きたいのです。 社外に発信することは公の約束になりますので、ト ップもそれを見た社員もきちんとやらなければという意識が高くなります。
二つ目は「コンプライアンス相談窓口」「倫理ヘルプライン」を設置し機能させることです。窓口が順調に運営され上手く機能を果たさないと公益通報者保護法そのものに対応できません。 現在相談窓口に入る内容は、なんとなく長電話になるケースや主旨が掴めない長いメールの対応に悩むケースがあると思いますが、それらに誠実に対応することが大切で、それがご担当者のお仕事です。
悩んでいる人の立場できちんと答えること、社内通報でも公益通報者保護法に基づく法令違反の相談でもその気持ちは同じです。それに伴って三つ目は、日ごろの教育研修が大事だということです。 今日のようなセミナーの機会は
積極的に参加されて随時新しい情報を社内に還元して下さい。
説明の際に、自社で作成した資料だけではなく、内閣府ウェブサイトからダウンロードした資料を添付するなど公の資料を使うと社内の理解も深まると思われます。

倫理ヘルプラインの利用方法

 公益通報者保護法を考えるときには、コ ンプライアンス経営全体をどのように運営するかということが重要となってきます。きちんと社内体制として構築、浸透していることが前提となります。
つまり、コンプライアンス経営がプラットホームになってその上に公益通報者保護法にどう対応するかという問題があるという考え方です。 ここに倫理ヘルプラインについて「 ぜひ相談していただきたい事項」を具体的に挙げます。

@秘密情報の漏洩や乱用など
A会社資産の乱用・不正使用
B社会の良識・常識に反する行為や言動
C 法令違反になるおそれのある行為
Dその他何か問題がありそうな行為、です。

Cの法令違反になるおそれがある状況で相談を受ける場合が多いと思いますが、その中には正に生じようとしている場合も入ってきます。
そのためには社内の風通しをよくしてコミュニケーションをよくすることは前提となりますから、企業内のパンフレットも法務部系の方が固めに難しく書いている場合が多くなっていますが、イラストやマンガなど
を使って誰でも相談や通報ができるイメージにしていくほうがいいと思います。
そのような点から運営上のポイントは、法 の主旨と同じく、相談報告した人を差別するようなことを絶対にしない、内容を秘密にする、特定の人が運営する、という点です。
対応する人は経験を積んだ特定された人でないと出来ません。 弁護士の先生と話をしたときに、こんな例がありました。「最近の社員は賢いというかずる賢いというか、非常に微妙なことを相談してくる。よく聞いていると、予め会社の倫理ヘルプラインに相談し答えをもらった後、知らないふりをして弁護士の社外ルートに相談にきているのではないかと思われる」。
法律事務所の場合、法律の専門家として対応するのが原則ですから法律の立場で話します。さらにすごい時は「先生そのご意見ペーパーで頂けませんか。」と言う人もいたそうです。 手を変え品を変え微妙な言い方で相談に来る事例も現実にあります。
このようなことにもきちんと対応するには倫理ヘルプラインや相談窓口の担当者は法律やコンプライアンスン全般のことも、会社がどういう方向に向かっているかも押さえておかないと正確な答えができないということになります。
担当者がどういう答え方をするかは、コ ンプライアンスの骨格、会社の信用を支えているからです。
そしてそれが会長や社長への信用に繋がるわけです。

今後の課題

 現在の公益通報者保護法は国内を対象に議論されているので、グローバル展開を行っている企業の海外での対応方法を考えていく必要があります。 外国の社員もメールで社内通報できるような仕組みも徐々に進んでいますが、社内通報制度のグローバル展開という課題が次のステップとしてあるわけです。
また、今後はグループ企業への対応も重要となります。 公益通報者保護法への対応は本社機能では整備されている場合が多いですが、グループ子会社などの場合、本社が一元管理できない部分があるので、社外のラインにつなぐという例が多くなっています。
大企業では、はじめから社内のラインとダイヤル・サービスや弁護士事務所など社外ラインの二つを設けています。本社の内部に設置された窓口に通報すると、匿名であっても話した内容から関連会社が想定される可能性があるため、グループ企業の場合は親会社(社内)より社外ラインが使われています。
グループ企業は規模も違いますから親会社の方法を全て押し付けるのではなく、参考として準拠させる、外のラインで対応させるなど、必要な場合に活用される窓口にしないと、もしも問題が発生した場合に、第三者の視点からはグループのブランドとして批判が集中するというリスクがあります。
CSR の考え方ではサプライチェーンマネジメントにかかわる問題になります。
公益通報者保護法に関しては、本社がきちんとすると同時にグループ企業に徹底させることが重要で、その対策をとっていないと意外にグループの小さなところでたたかれる問題が起こるわけです。
内閣府のウェブサイトには過去の労働法に基づく内部告発にまつわる判決事例が整理されています。
労働法の判決は公益通報者保護法の前提になっていますので、今までの判例から最終結論(法廷闘争)にもちこまれたケースが参考になります。
労働法の判決では、従業員が言ったことが不誠実で虚偽である場合にはほとんど判決で棄却されていて、事実が認定されている場合には企業に厳しい判決が下っているのが特徴です。

質疑応答から

Q: 企業がとった是正措置に通報者が満足せずそれを理由に外部へ通報するのは良いのでしょうか?

A: 是正措置の不満をもとにして外に出せるかというのは、今の法律の中では要件にはありません。
法の狙いは、社内のコンプライアンス経営の徹底と自浄作用を高めるという点ですから、是正措置を通報者が不十分と思うのであれば、もう一度倫理ヘルプラインに申し出るような方法で運営するのが良いと思います。


Q: 内部通報制度が設けられている企業の場合、それを経ないで直接外部へ言った場合に内部で罰則の対象となり
ますか?

A: 日本では、社内に通知しなければ外に出してはいけないという法律にはなっていません。
ご質問のように社内でこれだけ整備しているんだから、社内に言わないで外にいうのはおかしいんじゃないかという点ですが、これは社内でその人に罰則を与えると法の主旨に反することになります。社内のルールとしてなるべく使いましょう、と社員教育しておくことが良いかと思われます。


Q: 労働時間の残業、休日出勤、残業手当の不払い問題で労基署に飛び込む例が多数ありますが、今後この制度との関連性はどうなりますか?

A: これは微妙な内容なのですぐに返答をすることはできませんが、サ ービス残業の場合当事者は信ずるに足る証拠をもっている場合が多いので、監督官庁に持ち出しやすい案件だということは間違いありません。
また、サービス残業は厚生労働省が2年前から撤廃を激しく指導している背景等もあり、今後状況が厳しくなることが予想されます。
対応策としては、社員教育で「早めに上司と相談して是正して下さい。 倫理ヘルプライン窓口に上げてください。会社として一生懸命是正しますから。」と指導するやり方をお奨めします。

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